多管式熱交換器(シェル&チューブ式熱交換器)
多管式熱交換器(シェル&チューブ式熱交換器)は、文字通りシェルと呼ばれる円筒内に
多数のチューブを配列した最もスタンダードな熱交換器です。
この熱交換器は、流体を選ばず、温度・圧力・使用材質等の設計条件範囲が広く、構造が単純な為、
他の熱交換器と比べて信頼性が極めて高いものと言われております。
ケミカルプラント、石油工業、原子力プラントをはじめ、食品・飲料・医薬等の製造プラント、
またビル、ホテル等の空調分野等あらゆる産業用の熱交換器として最も多く使用されております。
株式会社シーテックでは、既設器のリプレイスはもとより、データシートから熱収支及び
必要伝熱面積(U値)を算出し、新設機器の設計も行います。
多管式熱交換器は、液体や気体等の流体を問わず、高温から低温、また低圧から高圧まで対応可能で、
加熱・冷却はもちろん凝縮や蒸発にも適用出来ます。
データシートの情報に不明点や不合理があった場合でも、必要に応じお客様とディスカッションを
重ねながら、設計、製作、納入後のアフターケアまでワンストップで行ってまいります。
多管式熱交換器は構造的に、以下の三つに大別できます
固定管板式 TEMAタイプ:BEM
下図のように、管板(チューブシート)をシェルの両側に溶接にて固定した型式です。
構造が簡単で、安価に製作可能であるため広範囲で使用されるスタンダードタイプです。
シェル両側のボンネットを取り外すとチューブ側内面へのアクセスは可能なので、清掃は容易です。
但し、シェル側へのアクセスは困難であるため、シェル内面及びチューブ外面の機械的清掃は不可となります。
このような構造上の特性を踏まえて、通常シェル側へは、腐食性のない流体、比較的汚れの少ない流体、
部材への固着性の少ない低粘度の流体を流す場合が多くなります。
また、シェルとチューブのメタル温度の差が大きい場合には、シェルに伸縮継手を設置し、熱膨張差を吸収させます。
Uチューブ式 TEMAタイプ:BEU
U字管を採用したタイプです。チューブは、片側のみ固定となる為、熱伸びに関してはフリーです。
また、管束が取り外し可能な為、管外の清掃が可能です。
この型式の欠点は、Uチューブの取替えが困難な事、U曲部があるため管内の清掃が困難な事です。
その為に通常は、管側には汚れの少ない流体を用いるように設計致します。
外側のUチューブが内側のUチューブを引き抜く際の障害となるために内側Uチューブのみを
交換する事が出来ません。
遊動頭式 フローティングヘッド式 TEMAタイプ:AES
シェル-チャンネル間にボルト締めされた固定管板を一方に、他方の管板をフリーに動くようにした型式です。
シェルとチューブの熱伸びの差は、遊動管板側が移動する事で吸収されます。
管束はシェルから引き出せる構造で、シェル側、チューブ側共に機械的清掃や検査が可能となります。
また、遊動頭も分解・点検可能ですので、使用条件が過酷な場合でも採用されるケースが多くあります。
欠点としては、構造が少し複雑で部品点数も多くなり、価格が固定管板式やUチューブ式と比べて割高となる点です。
対応法規
経済産業省 |
ガス事業法 |
電気事業法 |
高圧ガス保安法 |
厚生労働省 |
第一種圧力容器 |
第二種圧力容器 |
小型圧力容器 |
コンパクト型多管式熱交換器
弊社のコンパクト型と呼ばれる多管式熱交換器(シェル&チューブ式熱交換器)は、伝熱管に以下の3種類の
細管を採用したタイプとなります。
型式 |
管外径 |
肉厚 |
S6 |
φ6.0mm |
0.5mm or 1.0mm |
S8 |
φ8.0mm |
0.5mm or 1.0mm |
S10 |
φ10.0mm |
1.0mm |
SU※Uチューブタイプ |
φ8.0mm |
0.5mm |
材質
SUS304、SUS304L、SUS316,、SUS316L、SUS310S、SUS329J4L、Titanium
特徴
- 基本的に圧力容器適用範囲外でのご使用となります。
- 小型・軽量である為、短納期・低価格で製作可能です。
- ステンレス製或いはチタン製の細管を採用しておりますので、小流量の場合でも管内流速が早まり、境膜伝熱係数が高くなりコンパクトな設計が可能です。
- 早めの管内流速による自浄作用でスケールの付着を防ぎ長寿命となります。
- 管板をシェルに直接溶接する構造(TEMA-Nタイプ)としておりますので配管途中に設置する事が
可能です。
型式表示法
用途
- 液-液の顕熱加熱、冷却
- 蒸気による液の加熱
- 蒸気による空気等のガスの加熱
- 温水/冷水によるガスの加熱、冷却、凝縮
推奨使用環境
- 設計温度:450℃以下
- 設計圧力:0.7MPa(G)以下
※その他、現場環境により使用の可否がございますので、別途ご相談下さい。
※熱膨張差によっては伸縮ベローズを設けます。
S6型
図面
S6型寸法表
S8型
図面
S8型寸法表
S10型
図面
S10型寸法表
SU型
図面
SU型寸法表
プレートフィンチューブ式熱交換器
伝熱管にフィンと呼ばれる0.2mm~0.3mmの薄板を専用のプレス機にて圧入し取り付けたものです。
エアコン室外機から見える熱交換器もこれに属します。
フィンの取り付けピッチは2mm~3mm程度となりますので、小さなスペースにより多くの伝熱面積を取ることが出来ます。
蒸気や液体をチューブ内に通し、管外は空気等の気体を通す専用の熱交換器です。
液体-気体のような組み合わせで、各々の境膜伝熱係数の差が大の場合に推奨出来る型式です。
これとは、反対に「液体同士」や「気体同士」の熱交換には向いておりません。
またその構造上、シェルやヘッダーが角型となる為にあまり高圧流体、高圧ガスには推奨出来ません。
フィンと伝熱管とは、溶接接合ではないため、高温~低温の繰り返しによる熱影響でフィンの緩みが出る場合があり、使用条件においては注意が必要です。
【参考図面】
選定上のワンポイントアドバイス
通風エリア寸法の決め方
通過風速が1.5m/sec~4.0m/secにおさまるように決定して下さい。
風速が遅すぎると効率が悪くなり、速すぎるとフィンの片寄り等の懸念があります。
送風機の静圧が決まっている場合は事前にお知らせ頂けましたら、圧損を考慮したうえで選定させて頂きます。
またガス冷却の場合、凝縮が伴う場合にはミストの飛散が生じる為、風速を2.2m/sec以下にして下さい。
設置状況により寸法等の制約があり難しい場合はデミスターを設ける事も可能ですのでお申し付け下さい。
計算例
風量 |
150N㎥/min |
入口空気 |
0℃ |
出口空気温度 |
100℃ |
エレメント有効長 |
1000mm |
エレメント有効高 |
900mm |
エレメント内平均風速 |
𝑉=Q÷𝑇/(𝑇+𝑇(𝑎𝑣𝑒))÷(60×A)
𝑉=150÷273/(273+50)÷(60×0.9″)”
=3.3 m/sec
|
推奨使用温度 |
0℃~350℃ |
推奨使用圧力 |
0.2MPa(G)程度まで(ガス側) |
使用材質 |
伝熱管サイズ |
鋼管 10A
ステンレス鋼管 10A
銅管 φ15.88
|
伝熱管材質 |
SGP、STPG370、STB340
SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L
銅管(C1220T)
|
フィン材質 |
アルミフィン、鋼フィン、SUSフィン、銅フィン |
最大製作可能寸法 |
エレメント有効長 |
2400mmまで |
エレメント有効段数 |
40段 |
※これより大きなサイズも組み合わせによって可能ですのでご相談下さい。 |
管側流体 |
飽和蒸気
冷水
ブライン(ナイブラインZ-1等)
熱媒体油(バーレルサーム等)
冷媒ガス
|
エロフィンチューブ
エロフィンチューブは伝熱面積を増やすためチューブに帯状の薄い放熱板(フィン)を螺旋状に巻きつけたもので放熱効率を向上させます。チューブとフィンとの密着度がよく伝熱効率がすぐれています。
材質につきましては、鉄、ステンレス、銅、と幅広く製作可能です。下記条件をご指示頂きましたら迅速にお見積もり致します。
- 主管材質・全長
- フィン材質・巾とピッチ
- 両端処理方法(切りっ放し・ネジ・フランジ)・アキ寸法
表にない寸法もお問い合わせ頂きましたら検討させて頂きます。
エロフィンチューブ製作寸法表
上段:有効面積 ㎡/1m
下段:放熱量 kcal/1m・h (自然対流式 室内0℃ 蒸気0.1MPaG 飽和温度120℃)
▼画像はクリックで拡大します
プレート式熱交換器 ガスーガス
金属板2枚を成形加工後、溶接にて1組とし、数組から数百組を組み合わせ一体化した熱交換器です。
この金属板をエレメントとして対流伝熱により排ガス等を利用して空気やその他ガスを加熱します。
熱交換させる流体が両方ともに気体の場合は、多管式に比べ非常にコンパクトに設計出来ます。
これにより軽量化が可能となりますので経済性にも優れた熱交換器といえます。
エレメント説明図
特徴
- エレメントは、平板の組み合わせであるため、圧損を低くする事が可能です。
- ゴミ焼却場や産廃処理施設等、劣悪な環境においてもダストの付着が少なく、またオプションでダスト除去装置等を設置する事によりエレメント流路の目詰まりを解消出来ます。
- エレメントが腐食等による損傷を受けた場合は、1ブロックごとの交換が可能です。
制作事例
設計範囲
ガス温度 |
MAX750℃ |
最高使用圧力 |
50kPaG (0.05MPaG) |
使用材質 |
ステンレス鋼 |
SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、SUS310S |
炭素鋼 |
SPCC、S-TEN、COR-TEN |
ニッケル合金 |
ハステロイC276 |
高耐食スーパーステンレス鋼 |
NAS185N |
※通常の設計範囲は上記となりますが、特殊仕様にて範囲外の設計も可能ですので、お問い合わせ下さい。
腐食性ガスによる注意事項
ガス中の硫黄含有量によって熱交換器の寿命が左右されます。
低温腐食では、概ね200℃以下で硫酸露点腐食が起こりますので、材料の選定に関しても 経験豊富な弊社へご相談下さい。
その他腐食性ガスを含む場合には、ダスト対策も必須となります。
腐食性ガスが通過するエレメントのピッチを広く設計することや、メンテナンスハッチや ドレン口を設けコンプレッサーエアーや、高圧水による定期的な洗浄を推奨致しております。
また弊社スタッフの専用機器による清掃・メンテナンスも対応可能ですので、お問い合わせ下さい。